相 続 Q&A10
遺産分割の禁止
相続についての法律手続やよくあるトラブルや疑問に具体事例を用いてわかりやすく解説します。
遺産分割の禁止をすることは可能か?
遺産分割の禁止をする手段そして有効性
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Q10
私(A)の父が亡くなりました。
遺言はありません。
父は個人商店である布団屋をやっていました。
私も父を継ぐ形で事業を手伝っていました。
相続人は私と弟の二人です。
弟は「事業は将来性が無いから、商店の土地建物については売却して代価を2人でわけよう」と言っています。
私の考えは、(商店は)祖父の代からの商店で地域とのつながりもあり、なにより私の生活の糧ですから、弟の意見には賛同できません。
弟の法定相続分については尊重しないといけないので、土地建物を私と弟の共有にした状態で弟の持分に対する賃料相当分を弟に払いながら、営業を続けていきたいと希望していますが、弟は「まとまった現金が必要なんで、即、商店の不動産と在庫商品等の事業資産を売却したい」といいます。
家庭裁判所に調停を申し立てることも考えましたが、以下の事情があります。
事業用資金として借りた銀行からの借金もあるので、今即時に商売を止めると、一括で事業の借入金を返済しなければならなくなり、返済できないと(商店の)土地建物も差押えられる可能性もあります。
しかし弟は聞く耳をもたず「即、(土地建物を)金にしよう」の一点張りで話がつきません。
私の希望としては(最悪でも)銀行の借入の返済をするための期間としてしばらくの間、遺産を分割できないような(現状維持)措置は取れないものでしょうか?
A10
遺産分割の禁止について、民法は「被相続人」(亡くなった人)が遺言により、遺産分割の禁止をすることができると定めています。
そしてその禁止の期間は5年を超えることができません。,
(民法908条)
遺産分割の禁止を定める方法については、以下の方法があります。
遺言による場合
上記で述べたように5年を超えない範囲で遺言により分割禁止をすることができます。
家庭裁判所に申し立てる場合
家庭裁判所に分割禁止の調停を申し立てることができます。
また、
遺産分割の審判の申立をした場合に、家庭裁判所は特別の事由がある場合、5年を超えない期間を定めて遺産の全部又は一部について分割を禁止することができます。
(民法907条3項)
協議による場合
相続人全員の協議で一定期間遺産分割の禁止をすることができます。
その場合も5年を超えることはできません。
禁止期間の更新することも可能だと考えられています。
ご質問の件は、相続人の一人である弟さんが遺産分割の協議でAさんと真っ向対立しているので、協議により遺産分割の禁止を合意することは困難と推測されます。
遺言書もありません。
そうすると、このケースでは、家庭裁判所に対して調停・審判の申立をして遺産分割禁止の審判を求めることが、もっともAさんの希望に添う形式となります。
(実際に裁判所に申立てる前に弟さんの意思を確認した上で協議をしても平行線で合意の成立が見込めないかどうかを確認してください。)
Aさんの相続、遺産について、家庭裁判所が特別の事由があると判断し「遺産分割の禁止」をすることが適正と判断すれば「遺産分割の禁止」の審判がだされることになります。
家庭裁判所に訴えを申し立てる場合は、調停の手続を申立ててからでないとできません
(調停前置主義 家事審判法18条)
しかし、遺産分割の審判の申立ては、上記の調停前置主義の「訴え」に該当しないので、 最初から「調停」「審判」いずれの手続の申立をすることも可能です。
しかし、現実は、「調停」を申立てずに「審判」を申し立てた場合、裁判所の職権によって先ず「調停」に付されることが多いようです。
調停手続で成立がしなかった場合はそのまま審判手続きに移行されます。
遺産分割協議の意義や「遺産分割協議のこんなときどうする?」その他遺産分割について詳しく解説しています。
「遺産分割」をご覧下さい。
遺言書の作成、どういうときに遺言書を作ればよいか、遺言の種類について、遺言の意義について「遺言」でわかりやすく説明しています。
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相続とは
相続とは、亡くなった方(被相続人といいます)の財産や権利・義務について承継することです。財産等を承継する人(相続人といいます)は、民法で定められています。
被相続人の一身に専属したものは相続財産に含まれません(民法896条)
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