[消滅時効Q&A10 主債務者・保証人の消滅時効の援用の可否分類]

 

消滅時効Q&A>Q&A10

   消滅時効Q&A10 
主債務者・保証人の主債務の消滅時効の援用の可否分類

消滅時効に対してよくある質問をQ&A形式でわかりやすく解説します。

      

Q10

私(A)は知人(B)の借金の保証人になっています。
Q8の解説で「保証人が消滅時効完成前に債権者に弁済をしても(保証債務の時効更新)主債務の消滅時効を援用でき、結果として自分自身の保証債務の支払いも免れる。」 ということがわかりました。
そしてQ7の解説で「消滅時効完成後に承認(弁済等含む)をしたら、消滅時効の援用をすることができない」ということも理解しました。
私自身の債務(保証債務)とBの債務(主債務)の消滅時効の完成時が異なっている(保証債務の消滅時効が早く完成する場合)として、(私が保証債務の時効完成後に承認をしたら、私は保証債務の時効を援用できない ということは理解したうえで、)私が保証人の立場で主債務者Bの消滅時効(主債務の消滅時効)完成後(この時点で保証債務の消滅時効は既に完成している)に保証債務の保証債務を弁済した場合、私自身の保証債務の消滅時効を援用できないのは 当然として、保証人は主債務の消滅時効を援用できますか?また、同様の場合で、主債務者が自分自身の(主債務の)消滅時効完成後に承認をしている場合はどうなりますか?

A10

 

保証人が保証債務及び主債務の消滅時効完成後に弁済をした場合(債務の承認となる)保証人は、保証債務の消滅時効の援用をすることができなくなりますが、 主債務者が主債務の消滅時効完成前に承認(時効の更新)をしていない限り、保証人は主債務の消滅時効を援用できます。

また、主債務者が主債務の消滅時効完成後に承認をしている場合は主債務者は時効の援用をすることができなくなります。(昭和41年4月20日最高裁判例
しかし、保証人は主債務者の時効援用権の放棄とみなされる行為(時効援用権の喪失)に影響を受けません。
よって、保証人は、自身の時効援用権を喪失していて、なおかつ主債務者自身も時効援用権を喪失していても「主債務の消滅時効」を援用できるのです。

以下、詳しく解説します。

時効の援用とは
時効の援用とは、時効によって利益を受ける者が(援用権者)が時効の成立を主張すること。
時効による権利の取得・消滅は期間の経過により自動的に発生するものではなく、援用があってはじめて確定的に取得の権利が生じたり、権利が消滅する。

  

1 
保証人が保証債務の時効援用権を喪失した場合に主債務の消滅時効を援用できるか?

Bさんが銀行から借りた金銭(債務)について、Aさんが銀行との間で保証契約を締結し(Bさんの債務返済を)保証する場合、Bさんの債務を主債務、Aさんの債務を保証債務といいます。

本来、保証人は主債務の消滅時効を援用できます。(大正4年7月13日大審院判例)

保証人の時効の援用権は、「主債務の時効を援用する権利」と「保証債務(自身の債務)の時効を援用する権利」の2つがあります。
そして、保証人が何らかの事情で保証債務の時効を援用できなかった(Q10の事例では保証債務の時効完成後に保証債務の承認をしている) としても主債務の時効援用権も行使できなくなるものではないので、保証債務の時効援用権を喪失したとしても主債務の時効の援用をすることが原則できます。

しかし、主債務の状況によっては、保証人が時効の援用をできない場合もあります。
以下、場合分けして説明します。

(1)主債務に消滅時効の更新がない場合

主債務者が消滅時効完成前に消滅時効の更新がなかった場合は、問題なく保証人が主債務の時効を援用できます。

)主債務に消滅時効の更新があった場合

主債務者が消滅時効完成前に債務の承認(消滅時効の更新となる事項)をした場合は主債務が消滅時効の更新となります。
(消滅時効完成後に承認があった場合は消滅時効の更新の問題ではなく、時効援用権喪失となります。本ケースは消滅時効完成前の承認なので消滅時効の更新となります。) そして保証人に対しても影響があり、保証人は、主債務の消滅時効の援用もできないし、保証人自身の保証債務の援用もできなくなります。(民法457条 「主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。」)

よって、消滅時効完成前に主債務者に対して主債務の消滅時効の更新があった場合は、(主債務に時効の更新がなかったならば、消滅時効が完成する時点において)主債務の消滅時効が完成していない状態になっているので、消滅時効の援用の状態になっていない ということになります。
また、主債務の時効の更新の効力は保証人にも及びます。(民法457条)

よって、その場合は、保証人は主債務の時効援用ができません。

尚、上記内容は、後掲表のパターン Ⅰ Ⅴ Ⅷの場合となります。

 
 消滅時効完成後に主債務者が債務の承認をした場合、保証債務の時効援用権を喪失した保証人は主債務の消滅時効を援用できるか?

主債務者が消滅時効完成後に承認をした場合、主債務者は消滅時効の援用をすることができなくなります。(昭和41年4月20日最高裁判決

最高裁昭和41年4月20日判決は、消滅時効の援用をできない理由を「信義則に照らして」としています。
信義則とは社会生活において、互いに相手の信頼や期待を裏切らないように誠実に行わなければならないとする法理原則のことです。
信義則が問われたのは、債権者と主債務者との間の問題(相対的効果)であり、保証人に直接影響するものではありません。
そして、同様に保証人が保証債務の時効援用権を喪失したことは、保証人と債権者との間の問題であり(相対的効果)主債務に対する時効援用権を喪失したことにはなりません。
※ 尚、保証人は保証債務の承認はできますが、主債務の承認はできません。
( 昭和62年9月3日最高裁判決)
主債務の承認をできるのは主債務者及び承継人です。

よって、保証債務の消滅時効完成後に保証債務の承認をして保証債務の時効援用権を喪失した保証人は{主債務が時効更新(1の(2)の状態)になってなければ}主債務の時効を援用できます。

後掲表のパターンⅦの状態

3 
 保証人の保証債務承認と主債務者の主債務承認につき時効完成前後の時期及び時効援用権喪失の場合に分類わけした場合の時効援用の可否

下に掲げる表は、主債務者及び保証人がそれぞれある時期(時効完成前と完成後)に債務承認をした場合に、時効の援用ができるのか、できないのかを表した表です。

様々なケース(左側のローマ数字)で分類わけしています。

ケース 債務承認者 承認の時期 承認の時期  時効の更新/時効の援用の可否
時効完成前 時効完成後
主債務者

承認

消滅時効の更新①
保証人 時効の援用ができなくなる①
主債務者

承認

時効の援用ができなくなる②
保証人 保証債務・主債務の時効援用可③
主債務者 消滅時効援用可
保証人

承認

保証債務の消滅時効更新④
主債務者 消滅時効援用可
保証人

承認

時効の援用ができなくなる④
主債務者

承認

消滅時効の更新
保証人

承認

時効の援用ができなくなる①
主債務者

承認

時効の援用ができなくなる
保証人

承認

保証債務の消滅時効更新④
主債務者

承認

時効の援用ができなくなる
保証人

承認

時効の援用ができなくなる④
主債務者

承認

消滅時効の更新①
保証人

承認

時効の援用ができなくなる①
① 民法457条 保証人は主債務の時効援用・保証債務の時効援用両方できない
② 主債務者は時効の援用権を失う 判例 最高裁昭和41年4月20日判決
➂ 例外:昭和44年3月20日最高裁判決
➃ 保証人は保証債務の援用は不可だが、主債務の援用は可能

ケースⅠ 主債務者が消滅時効完成前に債務の承認をした場合

主債務者が消滅時効完成前に債務の承認をした後に主債務者・保証人は時効の援用ができるのか?
という観点から見ていきましょう。
1の(2)」で説明した事例です。

主債務者は、自ら債務承認をしてしるので、消滅時効の更新になっています。
そして保証人に大しても民法457条により同じく消滅時効の更新になっています。 (民法457条 「主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。」)

➀の説明の通り、保証人は、保証債務についても主債務についても時効の援用をすることはできません。

ケースⅡ 主債務者が消滅時効完成後に債務承認をして保証人は時効援用権を喪失していない場合

主債務者は消滅時効の援用権を喪失します。
(昭和41年4月20日最高裁判決)

保証人は保証債務の消滅時効も援用できるし、主債務の消滅時効も援用できます。
上で説明した「」の場合で、(2と少し異なるのは)保証人が保証債務の消滅時効完成後に保証債務承認をしていないケースとなります。

ケースⅢ 保証人が保証債務の消滅時効完成前に債務承認をした場合

保証債務の保証債務の消滅時効は更新します。
保証人は、保証債務の消滅時効の援用はできませんが、主債務の消滅時効の援用をすることができます。

保証人の保証債務の消滅時効更新は主債務には影響ないので(民法153条3項)主債務者は(消滅時効完成後)主債務の消滅時効の援用をすることができます。

ケースⅣ 保証人が保証債務の消滅時効完成後に債務承認をした場合

主債務者は(消滅時効完成後)主債務の消滅時効を援用できます。

保証人は保証債務の時効援用はできなくなるが、(昭和41年4月20日最高裁判決)主債務の消滅時効を援用することができます。

ケースⅤ 主債務者が主債務の消滅時効完成前に債務承認し保証人が保証債務の消滅時効完成後に債務承認をした場合

主債務は消滅時効の更新となります。

保証人は、主債務及び保証債務の消滅時効の援用をすることができません。(民法457条)
保証人が保証債務の消滅時効完成後に債務承認をしなかったとしても結果は変わりません。(ケースⅠと同じ)

ケースⅥ 主債務者が主債務の消滅時効完成後に債務承認をして保証人が保証債務の消滅時効完成前に保証債務の債務承認をした場合

主債務者は消滅時効の援用ができなくなります。
(昭和41年4月20日最高裁判決)

保証人は保証債務の消滅時効が更新となるので、保証債務の時効を援用できる状況下にはありません。
しかし保証人は主債務の消滅時効の援用をすることができます。
(民法153条3項及び時効援用権喪失の相対的効果)

ケースⅦ 主債務者が主債務の消滅時効完成後に債務承認をして保証人が保証債務の消滅時効完成後に債務承認をした場合

」で説明した事例です。

主債務者は消滅時効の援用をすることができなくなります。
(昭和41年4月20日最高裁判決)

保証人も同様に保証債務の消滅時効の援用はできません(昭和41年4月20日最高裁判決)が、主債務の消滅時効の援用はできます。

但し、保証人が、主債務者の債務承認を知つて保証債務を承認した場合には、保証人がその後主債務の消滅時効を援用することは許されないとする判例があります。 (昭和44年3月20日最高裁判決

ケースⅧ 主債務者が消滅時効完成前に主債務承認をして保証人が消滅時効完成前に保証債務の承認をした

主債務の消滅時効の更新となります。
主債務者は消滅時効の援用できる状況ではありません。
保証債務の消滅時効の更新となります。
保証人は、保証債務の消滅時効の援用をできないし主債務の消滅時効の援用をすることもできません。(民法457条)

民法改正後の消滅時効

令和2年4月1日施行された改正民法により、消滅時効の規定も新しく変更されています。

しかし、令和2年4月1日より前に権利が生じた場合とその日以降に権利が生じた場合とでは、適用が異なります。

令和2年4月1日より前に権利が生じた場合(例:AさんがBさんに令和2年1月1日に50万円を貸した。)は旧法が適用されて改正後の新法は適用されません。
令和2年4月1日以降に権利が生じた場合は、(例:AさんがBさんに令和2年5月1日に50万円を貸した。)新法が適用されます。
(根拠:民法の一部を改正する法律附則10条 1項、4項)

よって、以下説明することは旧法の説明と新法の説明を並列的にしています。

説明書きの箇所に旧法の説明は(旧法)、改正後の新法の説明は(新法)と記載しています。

新法では、貸金業者であろうが個人であろうが、区別なく消滅時効の完成する期間は、「権利を行使することができることを知った時から5年、権利を行使することができる時より10年」となります。
(新民法166条第1項)

「権利を行使することができる」というのは、例えば金銭貸付で支払期日が経過したことにより、「貸金を返してください」と請求できることをいいます。

債権者が貸金業者や銀行のような会社組織であれば、権利を行使できる時を知らないはずがありませんので、5年経過によりほとんどの場合は消滅時効が完成すると考えて良いでしょう。

貸金業者から借入をし、最後に返済したとき又は最後に借入をしたとき(どちらか遅いときから)5年以上経過した場合は消滅時効が完成している(=借金の支払い義務がなくなる)可能性があります。

最後の返済又は最後の借入から5年以上経過していて、その間に「時効の完成猶予又は更新」(旧法では「時効の停止」、「中断」)となるような事実がない限り、 消滅時効が完成することになります。
(新民法147条)

「時効の完成猶予」とはある事由(事由とは、物事の理由・原因、又はその事実)が発生した場合に、一定期間時効が完成せず、猶予されることです(旧法では「時効の停止」といいました)

「時効の更新」(旧法では「時効の中断」)とは、時効期間が進行中に、ある状態が生じた場合に時効期間がリセットされ、再びゼロからスタートすることになることです。
(例: 消滅時効期間が5年の場合、もう3年経過していて、あと2年で消滅時効が完成するようなときに、更新があると3年が0になり、再び0時点から5年経過しないと消滅時効が完成しません)

「時効の完成猶予」の具体例は、訴訟を提起されたり、強制執行(差押)されたりすること等になります。

そしてそれらの事由が当初の目的を達成して終了した時(取下や取消等で中途で手続きが終了せず、手続きが最後まで行われた)から、再び時効期間が開始されます(時効の更新)

具体例: 訴訟手続きにおいて判決が出されその後(判決が)確定(訴訟の終了)、または確定判決と同一の効力を有するもの(例:和解、調停)により権利が確定した場合、そのときから新たに時効期間が開始されます(時効の更新)

自分が債務を承認(借入のあることを認めること)することは(残額の一部を弁済したりすることも承認となります)完成猶予ではなく即時に「時効の更新」となります。
(民法152条)

消滅時効の正確な起算点は下記を参照ください。

原則、貸付け金の請求権の消滅時効の起算点は、支払期日(正確にはその翌日)となります。

リボルビング取引の場合には、「期限の利益喪失(貸付金を一括で返済しなければならなくなること)の日」を定めている場合が多く、その期日の翌日が消滅時効の起算点となります。

※リボルビング取引とは予め締結する基本契約(包括契約)において、貸付金利、貸付限度額、返済方式等の基本事項を定めておき、それに従って、借入と 返済を繰り返す貸付形態

もし、5年以上借入も返済もしていない場合で、貸金業者から、請求されたり、訴訟を提起されたりした場合は、お気軽に当事務所にご相談ください。

消滅時効が完成している場合は、消滅時効を援用 することにより、(簡単に言うと)借金が無くなるということになります。 {貸金業者が自ら有する債権(貸金を請求する権利)の権利を行使できなくなるということになります}

※個人間の貸借のように「商人や会社でない者が双方当事者となる貸借」の場合は民事債権となり、消滅時効期間は10年となります。(旧法 民法167条)

※ 信用金庫、信用組合、農協、漁協、商工中金、労働金庫等は会社や商人
 ではなく「非営利法人」ですので、原則消滅時効の期間は10年となります。
 但し、債務者が個人事業主や中小企業で借り入れ目的が「事業資金」等
 事業目的の場合は「商事債務」となりますので、商事債権の時効期間と
 なり、5年となります。
旧法での説明です。 新法では「商事債権の消滅時効(商事時効)」という考え方は廃止されました。
しかし新法においても債権者が貸金業者や銀行のような会社組織であれば、権利を行使できる時を知らないはずがありませんので、その場合ほとんどの債権は5年経過により消滅時効が完成すると考えて良いでしょう。

新法では個人以外の場合は、たいてい5年で時効が完成する場合が多いでしょう。
個人の場合は、個人債権者が権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できるときから10年となります 

 例:個人間でお金を貸したけれど、返済期日を「借主の出世した日(課長に昇進した日)」と定めていて、貸主が借主の出世した日を知らない場合は、借主が出世した時から10年で消滅時効が完成しますが、10年経過する前に貸主が、借主の会社に電話して借主の出世(課長に昇進)を知った時は知った時から5年となります。
5年経過する前に借主が課長になってから10年経過していた場合は、その時点で消滅時効が完成となります。)

時効の援用とは
時効の援用とは、時効によって利益を受ける者が(援用権者)が時効の成立を主張すること。
時効による権利の取得・消滅は期間の経過により自動的に発生するものではなく、援用があってはじめて確定的に取得の権利が生じたり、権利が消滅する。

    

           

           

           

           

   消滅時効詳細

消滅時効について、更に詳しく知りたい方は、当事務所債務整理専門サイトの「消滅時効 解説」をご覧下さい

           

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